伊藤 加苗/保健師

伊藤 加苗/保健師

今回はストリートメディカルラボ第6期修了生、佐賀大学医学部附属病院の肝疾患センターで保健師として働く伊藤 加苗さんにお話を伺いました。

ハッピーとヘルシーをセットに医療課題を考える

ストリートメディカルラボを知ったきっかけ

――まずは、伊藤さんがストリートメディカルラボに興味を持った経緯を教えてください。

現在は佐賀大学医学部附属病院の肝疾患センターで保健師として勤務していますが、それ以前は県の保健師として19年ほど働いていました。

感染症の担当をしていたとき、エイズ検査に来られるゲイの方々と接する機会が多くありました。検査に来られる方々と実際にお話しすると、皆さんご自身の健康やリスクをしっかり理解した上で、定期的に検診に足を運んでくださる、とても誠実で素敵な方ばかりなんです。

でも、採血そのものが好きな人なんていませんし、隠れながら来る人も多く、結果を待つ間の彼らの表情には、言葉にできないほどの強い不安が滲み出ていました。こういう特殊な空間のなかで、空間や仕組みを工夫することで彼らが安心する空間をつくれないだろうかという想いをずっと持っていました。その後新型コロナウイルスが流行し、そこでは何もできなかったのですが、医療従事者として課題意識を抱えていました。

そんな中、一緒にお仕事をしていた第5期修了生である肝臓内科医の井上香先生がSNSでラボを紹介されているのを目にし、ストリートメディカルラボを知りました。
さらに、佐賀県が進めている「さがデザイン」というデザインの力で地域課題を解決する取り組みや、井上先生に薦められて読んだ武部貴則先生の著書「治療では遅すぎる」を通し、「医療とデザインはマッチングできるんだ!」と衝撃を受けました。

少し視点を変えるだけで、もっと患者さんの気持ちを楽にしたり、新しい価値を生み出せることに可能性を感じ、ストリートメディカルラボに飛び込んでみることにしました。

ストリートメディカルラボ第6期の授業の感想

――ストリートメディカルの授業で印象的だった回はありますか?

蒲郡市の保健師さんがゲストで来てくださった回が、とても印象に残っています。私自身、長く行政の保健師として働いてきた中で、「新しいことやストリートメディカル的な発想は、行政の枠組みではなかなか受け入れられにくい」と、壁を感じていました。
でも、蒲郡市では行政の理解が非常に深く、先進的な取り組みをどんどん形にされています。その姿を見て、「行政でもやり方次第でこんなに面白いことができるんだ」と、大きな励みになりました。

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また、第10回の今井先生の「すごいアイデアの公式」の授業も面白かったです。アイデアを生み出すプロセスが体系化されていて、ワークショップを一緒に行った他の受講生とアイデアを出し合うプロセスがとても刺激的でした。

一つだけ心残りがあるとしたら、佐賀県に住んでいるのでオンラインでの参加だったことです。画面越しでも十分学びはありましたが、現地で体感できればもっと楽しかっただろうなと。熱量を直接肌で感じたかったです。

ストリートメディカルトークス(修了発表)を終えて

――修了発表に向けたチームでの活動はいかがでしたか?

私のチームは、一般企業で働く方やイラストレーターなど、多様なメンバーが集まっていました。私は18歳からずっと医療・保健の世界に身を置き、考え方の似た人たちに囲まれて働いてきました。だからこそ、全く異なる視点を持つメンバーからのアイデアや意見は、どれも新鮮で驚きの連続でした。

何より、チーム全体に「相手を否定しない」という安心感があったのが大きかったです。チームのバランスがとても良くて、みんなそれぞれのメンバーのことをリスペクトしているという安心感があったことで、最後まで楽しみながら活動をすることができました。

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――当日の他のグループの発表を聞いて、感じたことはありますか?

どのチームも本当に個性的で、自分にはない発想やアプローチが次々と飛び出してくるのが面白かったです。
特に、ストリートメディカルラボの中間課題で行った個人ポスターの時の課題意識が、最終的なチームの提案にしっかりと繋がっている方がいて、一人ひとりの原体験が、仲間と掛け合わされることでこんなにも豊かな形になるんだと感じました。

ストリートメディカルラボの受講を検討してい流方へ一言

――最後に、受講を検討している方へメッセージをお願いします。

保健師としての経験を重ねる中で、「住民の方がもう少し良くなればいいな」という想いはずっと持っていました。でも、その「もう少し」をどう形にすればいいのか、自分でも答えが見つからず、もやもやとしていました。

行政の現場では、どうしても何かが起きてから解決するという「後追い」の仕事に追われがちで、健康というテーマがどこか後ろ向きに捉えられてしまうことも少なくありません。ですが、このラボを通じて「ハッピーとヘルシーはセットである」という考え方に出会い、衝撃を受けました。

病気を治療する、人をヘルシーにする前に、「人をハッピーにすること」がある。その視点を学んだことで、自分の仕事に対する目線が変わりました。
今は職場でも、修了生の先生方と近くで働く機会に恵まれています。以前のように過去を振り返って仕事をするのではなく、二歩三歩先を見て明るく前向きに課題を解決しようというマインドに自分自身が変化したことで、仕事の仕方も大きく変わったと感じています。

だからこそ、ぜひ全国の保健師さんにも受けてもらいたいです。ストリートメディカルの視点は、きっと仕事をより明るく豊かなものにしてくれると思います。