小野薬品工業株式会社さま 法人研修レポート

2025年1月から6月までの半年にわたり、小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下「小野薬品」)にて全6回のストリートメディカルラボ研修を開催しました。

今回の研修先である小野薬品さまは、企業理念に「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」を思い切って、前向きな医薬品開発に取り組み続けてきた企業です。社員の挑戦を加速させることを目的として、2021年にイノベーション人財育成プログラム「Ono Innovation」プラットフォーム(OIP)」を発表。

そんな小野薬品さまが、ストリートメディカルラボの「病を診ずして、人をみる」という視座や、医療・デザインの両領域で活躍する講師陣の専門性、そして社会実装を前提としたラボの取り組みに共感し、社内人民財育成・挑戦風土醸成の覚悟として、本研修の実施に至りました。

研修実施内容
本研修は、デザイン思考やビジネス創造力を実践的に身につけることを目的に、「講義」「ワークショップ」「個人企画発表」「チーム企画プレゼンテーション」など、多層的な構成で実施しました。

伴走型サポート体制
研修期間中は、定例セッション以外にも多角的なサポートを実施しました。 オンラインでスタッフとの随時交流、企画の進捗や疑問点にタイムリーに対応。 さらに希望者を対象に1on1の壁打ちセッションを随時開催し、個々の課題に寄り添ったフィードバックを提供しました。 また、スタッフが各チームの会議にも帯同し、思考整理や視点の拡張を支援しました。 参加者の出力に向き合う伴走型のサポート体制を構築しました。

 

研修レポート

DAY1 2025年1月28日

沼田 努(ストリートメディカルラボ理事長)

講師紹介:医療とデザインをつなぐ実践者として、現場起点のイノベーション教育と人材育成を推進。デザイン教育・デザインスクール経営の経験を踏まえ、創造的思考と対話のデザインを導入する新たな教育アプローチを展開している。

講義テーマ:「デザインとは? 歴史からデザインの本質を認識する」

デザインの起源からバウハウスの誕生、そして現代のデザイン思考へと至る流れを辿りながら、デザインが社会とどの様に関わってきたのかを解説しました。デザインが色や形にとどまらず、人々の生活の価値を上げていくことにその本質があり、またそれを担うのはデザイナーだけでなく、生活者すべてがデザインに関わる重要性を語りました。
  

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ワークショップテーマ:「デザインアプローチによる行動変容」
自分の行動や習慣を起点に、ポジティブな変化を仕組みを考えるワークショップを行いました。行動を意識したい自分一人を対象に「日常のタッチポイント」「遊び心」「習慣化」などをキーワードに、チームごとに議論し最後は企画のプレゼンテーションを行いました。参加者同士の対話、心に優しくハッピーな企画を選択、アウトプットする試みを初回の授業では実施しました。

 

2025年2日目  219

DAY2 2025年2月19日
講師:Sean McKelvey
Stellar Science Foundation ストラテジックデザイナー ソフトバンクのロボット「Pepper」の開発に取り組む。BCG Digital Venturesにて社内の新規事業創出を支援。パーソンズ美術大学大学院戦略的デザイン修士修了。ビジネスと人間中心設計の融合により、組織の変革とイノベーション創出に貢献している。

 

 

講義テーマ:「デザイン思考の共感フェーズについて」
本講義では、デザイン思考の「共感」フェーズフェーズのために、主観理解の前にまず自分を観察するアプローチが取られました。講師からは、「NO禁止」「一瞬より発見」といった姿勢が共有され、柔軟で、な思考と対話の重要性が強調されました。共感とは同意ではなく、物事を深く観察し、感覚的に認識力であるという視点が示唆され、参加者が主体的に「気づきの入り口」を開く時間となりました
  

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ワークショップテーマ:「自分ごとからの課題構造化」

参加者は「ハッピー&ヘルシー」をテーマに、自己が取り組みたい課題を出発点とし、自身や他者の困りごとを観察。オンラインホワイトボードツールMiroを活用して、それらを構造化・視覚化しました。各自のアイデアに対して受講生全員がコメントやアイデアを加え、一つのテーマを多角的に深めていく共同作業を体験。個人発想がチームでブラッシュアップされていくプロセスを通じて、課題の背景にあるニーズや、「誰に、なぜ届けたいのか」を明確にする重要性を学びました。


 

 

 

 

DAY3 2025311日 個人企画発表と講評

講評メンバー:武部貴則(ストリートメディカルラボ学長)・井上祥(横浜市立大学 共創イノベーションセンター教授)
テーマ:「私がヘルシー&ハッピーで解決したいこと」


参加者20名全員が、自身の課題意識を起点に個人企画を立案・発表しました。テーマは、スマホ依存、服薬支援、入院中の子どもへのケアなど、日常の違和感や生活実感に根差した多様な内容が揃いました。「家族や大切な人の心身の不調を予防したい」「薬を老若男女に正しく届けたい」など、身近な人への思いから発想された企画が多く見られました。DAY2までに行った観察・構造化のプロセスを経て、それぞれが言語化と提案までを一通り体験。発表に対しては、武部貴則や井上祥ら講評メンバーから、類似の海外事例の紹介や、視点を拡張する手法、実装時に加えるべき要素など、多角的なフィードバックが提供され、参加者の企画に対する理解と解像度が一層深まりました。
 

講評・感想

武部貴則

「一見小さく見える課題こそ、実は最も多くの人に届く可能性がある」との言葉があり、参加者一人ひとりの視点が持つ価値の大きさが強調されました。また、「日頃は社会全体に向けた業務に携わっている皆さんが、この場では自分自身の想いや体験を出発点に企画を構築していたことが非常に印象的でした。DAY6のプレゼンテーションも楽しみにしています」とのコメントも寄せられ、今後の展開への期待が示されました。

井上祥

他者の視点を取り入れることで自らのテーマが一層深まり、企画が進化していくプロセスの重要性に言及しました。また、次回からはチームでの取り組みに移行することから、「視野をさらに広げ、社会実装を見据えた企画が生まれることを期待している」と述べ、個人発想から共創的な展開へと進む次のフェーズに向けた期待を示しました。
受講後に見つけた新たなテーマや、研修を通じて変容した視点なども多く見られ、0から1への創造を全員が達成しました。

 

DAY4 2025422

講師:山崎晴太郎(セイタロウデザイン代表)

講師紹介:クリエイティブディレクター/アートディレクター。株式会社セイタロウデザイン代表として企業経営に並走するブランド戦略を構築し、グッドデザイン賞など多数受賞。近年は現代アーティストとしても活動し、TBS「情報7daysニュースキャスター」等のテレビ出演歴も有する 

 


講義テーマ:「余白思考とブランド設計」

余白」や「絶対性」をキーワードに、意味や価値を浮かび上がらせるブランド設計を講義で展開しました。情報過多ではなく、“伝えすぎない設計”によって想像力や共感を引き出す重要性を説きました。また、他者との比較ではなく、自らの違和感や美意識を起点にする思考法が強調されました。事例として、JR西日本の新決済アプリ「Wesmo!」では、決済という体験の楽しさと身体性のデザインについて紹介し、さらに、受刑者にデザイン教育を提供する社会的プロジェクトにも触れ、ブランド構築を単なる表層ではなく、社会との関係性の中で再定義する視座が示されました。
  

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ワークショップテーマ:「リファインメタルの再ブランディング」

「リファインメタル」をテーマに、実在のプロジェクトを起点としたリブランディングに取り組みました。都市鉱山由来の金属を活用し、「伝えすぎないデザイン」や「あいまいさに宿る創造性」を重視したアイデア創出が求められました。各チームは、「世代をつなぐ時計型ジュエリー」「企業の社章」「サステナブルファッションとの融合」など多彩な企画を発表。山崎さんは、自らの制作事例として「紙の指輪を金属で再現したジュエリー」を紹介し、「正解かどうかに縛られず、自分の中の“絶対性”を信じてほしい」と呼びかけました。
 
 

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DAY5 2025523

今井裕平(Kenma inc代表)

講師紹介:ビジネスデザイナー。企業の潜在価値を可視化し、リストバンド型メモ“wemo”、賃貸住宅「THE CAMPUS FLATS」など多数ヒット商品をプロデュース。グッドデザイン賞等受賞、東京都「デザイン経営スクール」総合監修。テレビ『カンブリア宮殿』出演、著書『すごいアイデア』刊行

 

講義テーマ:「社会実装のためのビジネスデザイン」

「ビジネスデザイン」の構造と応用的思考法を理論と実践の両面から学びました。デザインとビジネスの融合を、「創造性によるゼロからの立ち上げ」と「仕組みによる拡張」と定義し、それらを連続的に捉える視点が紹介されました。企業理念を象徴的に具現化する「フラッグシップデザイン」や、「常識・新常識の公式」を軸とした思考法を学び、「wemo」「STTA」「朝ボトル」など、具体的な社会実装事例を通じて実務への展開方法を理解しました。
  
 
 

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ワークショップテーマ:「チーム企画に個性をインストール」

本ワークショップでは、チームの企画の「当たり前(常識)」を再定義し、「新常識」を導き出す思考演習を行いました。そしてそれを体現するサービスのアイデアとして再提案。今井氏からは、常識の分解精度や新常識の社会的意義、具体的な実装戦略に至るまで多面的なフィードバックがあり、チーム全体の企画精度が飛躍的に向上しました。
 

 

 

DAY6 2025624

チーム企画発表

講評者:武部貴則、井上祥、西井正造、藤山昌彦さま(小野薬品BX推進部部長)

本プログラムの最終回では、各チームが約3週間かけて検討・磨き上げてきた5企画のプレゼンテーションが実施された

 チームA
<色で伝わる! ~色を重ねることで、心が伝わる~>
夫婦間のコミュニケーション齟齬をHappyNo Communicationで解決する

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チームB
<プチ同窓会 人間ドック>
「プチ同窓会×人間ドック」で健診当日をワクワクした気持ちで迎えませんか


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チームC
<みんなで発見しに行く「はじまり」の場所Project
横断的プラットフォームで社員の声から生み出す医療イノベーションの実現へ


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チームDSML賞受賞)
<快適な車内時間でMRWell-being向上>
車を移動するリビング:Moving Roomに、MRを街の

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チームE
<患者さんも、ペット(犬)も、社会も、ヘルシーハッピーな世界へ>
服薬サポートドッグが服薬~健康~社会の課題を解決します


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全ての発表と講評が終了しました。

特に、「ストリートメディカル」ならではの視点である「ハッピー&ヘルシー」な要素が、アイデアやビジュアル表現の随所に丁寧に見られ、全体としてデザインクオリティの高さが印象的でした。

 

 

 

全ての発表と講評が終了しました。

特に、「ストリートメディカル」ならではの視点である「ハッピー&ヘルシー」な要素が、アイデアやビジュアル表現の随所に丁寧に見られ、全体としてデザインクオリティの高さが印象的でした。

 



各講師からは、「よくぞその見方に気づきました」「私もその企画に参加したい」といった熱のこもったコメントが次々と寄せられ、皆様の創造性と実現力への期待の高さが感じられました。

総評に先立ち、「ストリートメディカルラボ賞」の受賞が行われ、武部貴則学長より「どの企画も素晴らしかったが、本企画を核に他の全企画の実践も見応えあり」とのコメントとともに、社内で長時間過ごしながらMR(医薬情報担当者、製薬企業営業職)の課題に注目したチームDが選出・表彰されました。受賞チームの皆様、おめでとうございます。

講評メンバーの総括

西井正造(横浜市立大学助教ストリートメディカルラボ理事)

「どの企画も驚くほど完成度が高く、それぞれに強い個性と社会的意義が感じられました。講評メンバーそれぞれに“推し”の企画があり、私自身も個人的に強く惹かれたものもありました。小さな段階からでもそうではないので、積極的に実行に向けて一歩を踏み出していただきたいと思います。それで十分価値のある企画が考えられたことを、真剣に考えています。」

 

井上祥「製薬企業の皆様が、日常にあったストリート的な視点から企画を言われた点が非常に印象的でした。最近の医学会で注目されている「健康の社会的決定課題」、ところで医療以外の社会的・経済的・環境的な懸念が心身に与える影響を捉えた内容が多く、重大意義のある機会となりました。

藤山さまからは、「皆さん、半年間本当にお疲れさまでした。普段の業務とは異なる経験も多かったかと思いますが、その中で得られた気づきや学びを、今後の業務にぜひご相談いただきたいと思います。実現可能な企画も多く注目されましたので、ぜひ次のステップに向けて動き出していただけることを期待しています。」とコメントをいただきました。

武部貴則「医療の領域は、当面は医療従事者や健康にアプローチに留まらず、医療以外の視点がますます重要になっています。その流れは医療業界の枠を超え、様々な業界との連携まで広がっています。本日の企画の中には、近い将来、社会実装される可能性を十分に持っていたものもありました。皆さんとともに、未来の医療を形づくっていけることを、心から楽しみにしています。」

 

参加研修者のインタビュー

圓谷奈保美 (小野薬品経営戦略本部BX推進部OIP課)

圓谷さんは、この程度の研修の導入として、さらにご自身も一担当生として参加させていただきました。

この度、研修を導入した理由やきっかけについて教えてください。

はい、導入のきっかけとしては、武部貴則先生の活動に強い関心を持っていたことが大きいです。そのときから、医療を再生することに滞らず、より広い社会的な視点から研究に向いている姿勢や、ストリート医療の概念に大きな刺激を受けまし

印象だった授業はありますか?

印象に残っている授業は女の子もあるのですが、特に強い印象に残っているのは、ショーン社内研修ではなかなか体験できないスタイルで、非常に感覚的でありながら、身体性も含む独自の構成だった感じまし


チームでの企画制作はどうでしょうか?

チームでの活動は、とても刺激的で苦しい経験になりました。最初は「意見がまとまっているのか」と不安もありましたが、スタッフの方が「今は発散段階ですよ」と明確に方向性をつけていただいたおかげで、安心して自由に意見を出すことができました。 「誰の、どのような課題を解決したいのか」が徐々に明確になっていき、最終的にはそれぞれの原体験や個人の価値観とリンクするようなプロジェクトが見えてきたと思います



考えた有意義な新しい取り組みを実施できたこと、貴重な経験をさせていただけたことに深く感謝しています。

 

 

 

並木健吾さま

小野薬品工業株式会社 メディカルアフェアーズ統括部 一流メディカルアフェアーズ第三課  

この程度、この研修に参加した理由やきっかけなどを教えてください。

「武部先生の毒性病理学会でのご講演を拝見して、その発想がとても検討しようと思ったのがきっかけです。その後、同僚から『ストリート医療の研修があるよ』と聞いて、すぐに興味を持ちました。

印象だった講義やワークはありますか?

「どの講義も本当にたの先生ですが、私が過去に研究職で働いていたということもあって、特に印象に残ったのは今井裕平さん(kenma inc代表) 」

チームでの企画制作発表に関しては試合か?

「一番大変だったのは、チームメンバーとの会議日程の確保でしたね。それ以外は大変なことは無かったです。でもその分、普段あまり関係のない別配置の方とじっくり話すことができて、非常に良い機会となりました。 色々な視点が見えて、頭の体操という感じでした。 「ら健康、そして社会の課題を解決する」という企画を発表しました。アイデアは最近と考えていますが、正直まだ詰め込んでいない部分もあって…。でも、それが逆にもっと深く考えてみたい気持ちにつながりました。研修期間中は業務時間外でもつい気になってしまって、街中やネットで他の考えやプロジェクトを見ながら『この企画に活かせることはないかな?

「今まで経験した研修の中でも、集団で充実していました。同僚にもぜひ受けてほしいと思い、勧めたいと思います。」

 

総括

今回の研修、参加者の皆さんは、日常に潜む課題や気づきを出発点に、医療と社会をつなぐ創造的な企画を構築しました研修で作ったアイデアの多くは、医療の枠を超えた社会的意義と実装可能性を備えており、「未来の医療」を形づくる一歩となるものばかりでした。

ストリートメディカルラボは、皆様の挑戦と創造にこれからも伴走してまいります。