2025年7月12日、第6期第10回目の授業には、株式会社kenma 代表でありビジネスデザイナーの今井裕平先生にお越しいただきました。「すごいデザインの公式」をテーマに講義とワークショップを実施いただきました。
ビジネスデザイナーは、一般的なデザイナーよりも業務範囲が広く、アイデアを形にするだけでなく、それをビジネスとして成立させる仕組みづくりまでを担います。今井先生は、成功基準を測る上で「完成度」より「成果」を重要視されているそうです。講義の中では、手首に巻きつけるメモ「wemo」やコクヨと取り組む住宅事業、大阪・関西万博でのユニバーサルツーリズムプロジェクトなど、幅広い分野での実践事例をご紹介いただきました。
講義「すごいアイデアの公式」
講義の前半では、「すごいアイデアの公式」をテーマにアイデアを生み出すための考え方や基準についてお話しいただきました。今井先生は、アイデアを考える前に「基準」を定めることの重要性を強調されていました。この基準は、プロジェクトのゴール設定であり、成功の定義にもなります。ビジネスにおいてゴール設定を先にすることは一般的ですが、アイデアを考える場面では明確になっていない場合が多いことにハッとさせられました。プロジェクトの成功を、完成度ではなく「成果」で測るという今井先生だからこそ、その重要性をよく認識されているのだと感じました。
また、今井先生の考える「良いアイデア」とは、「独自性」と「市場性」が両立しているものだそうです。「ユニークなアイデアだけど、そのアイデアを欲しいとしてくれる人がいる」というようなアイデアを探るそうです。また、プロジェクトを成功させるには、そのアイデア(製品)をその場で購入してくれる「渇望者」が発掘できるかどうかが鍵になるそうです。これは、特に医療現場において重要な考え方だと思います。マスには届けられなくとも、確実にそのアイデアを必要としている人がいるかどうかという視点でアイデアを模索することの重要性を感じました。
「30分で劇的に向上するクリエイティビティ講座」
講義後半では、短時間でアイデアを発想するワークショップを行いました。アイデアを発想するには才能や感性、センスが必要という思い込みをくつがえし、論理的思考を重視する人でも実践できる「着眼点」で勝負する方法を学びました。デザイン分野に馴染みがなく、アイデアを出すことに苦手意識があった受講生にとっても再現性が高く、驚きの声が多く挙がりました。
既存の常識を「新常識」として言語化する、「新常識」を活用して具体的なアイデアに落とし込む練習を行いました。今井先生は、とにかく「たくさんアイデアを出す」ことが重要だとお話しされていました。たくさんアイデアを出した上で、いくつかに絞ってブラッシュアップしていくという流れは、第6回のクリエイティブディレクターの佐藤夏生先生の講義とも通じる点があり、クリエイティブな思考を鍛えるうえでの共通点があると感じました。
今回の講義を通じて、アイデアを才能や感性、センスに頼らず「再現可能に発想する方法」を学ぶことができました。また、授業の後半に今井先生が「絶対に成功するアイデアは誰にもわからない。しかし、大きく失敗しないように設計することはできる。」とお話しされていたことが印象的でした。大失敗をしないためにも「基準を設定する」ことや「渇望者を発掘する」ことが重要なのだと学びました。個人ワークを通してアイデアを一度発想した受講生にとって、刺さる内容が多くあったのではないかと思います。今後のグループワークでも今回の学びを活かしてくれることを期待したいです。

