2025年10月13日、日本橋ライフサイエンスビルにて「Street Medical Talks 2025」が開催されました。
本イベントは、ストリートメディカルラボ第6期生による、半年間にわたる学びの集大成を発表終了する会です。
メンターとして、ストリートメディカルラボ学長の武部貴則先生、フリーアナウンサーの町亞星先生、日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの山本尚毅先生、株式会社GENOVA取締役執行役員・横浜市立大学共創イノベーションセンター特任教授の井上祥先生4名にお集まりいただきました。
さらに特別ゲストとして、「イネーブリングシティ構想」を踏まえ、ストリートメディカルの社会設置拠点として都市デザインに携わっている愛知県蒲郡市副市長の犠牲年宏さま、蒲郡市ウェルビーイング課の石黒美佳子さま、廣田隆さまにもお越しいただきました。
特別講演「ハッピーからヘルスへストリートメディカルが目指す未未来」
イベントイベントでは、武部学長による特別講演が行われた。生活に密着した病気が多い現状を踏まえ、「ストリート」という日常の場での行動を自発的に変革させるための鍵となる「イネーブリング・ファクター」について説明いただきました。
また、「Happyは脂肪肝を予測できるか?」という最新の調査結果や、健康寿命が高い人が多い地域を指すブルーゾーンに関するお話を踏まえ、自己実現が高い幸福であることが健康に前向きな影響についてお話いただきました。
さらに、愛知県蒲郡市で活躍している「イネーブリング・シティ」についてもご紹介いただきました。 「イネーブリング・シティ」とは、そこで生活をしているだけで健康になり、最終的には自己実現が高める街を作る取り組みです。
卒業生による活動報告
ストリートメディカルラボ第3期修了生であり、一般社団法人チャイルドプレイラボ代表理事の猪村真由さんより、現在進行中の活動についてご紹介いただきました。
猪村さんが小学生の友人を時に小児がんで亡くしたことをきっかけに看護の道に進み、ストリートメディカルラボをはじめさまざまな活動を経て一般社団法人を立ち上げました。 猪村さんが制作し、入院している小学生を対象としたあそびのスターターキット「アドベンチャーBOX」は、2024年にグッドデザイン・ニューホープ賞の最優秀賞にも選ばれています。
時代の武部先生と高校の出会いや、ストリートメディカルラボでの学びなど、さまざまなお話を聞くことができました。
第6期生によるポスター企画発表
ポスター企画発表では、全7チームがそれぞれの企画を発表しました。どのチームもストリートメディカルラボでの学びや理念を自分たちなりに考え、独自の視点・アプローチで課題解決のためのプロジェクトを提案しました。
1.「アストロペンギンプロジェクト(宇宙ペンギンプロジェクト)」
チーム「Astro Penguin事務局」は、ALS患者さんのACPをサポートするプロジェクトを提案しました。 絶望を迎えやすい難病ALSの患者さんが未知なる人生を歩む過程を宇宙旅行、未踏の領域への旅を望み、意思決定をサポートするための取り組みです。 具体的にはACPのガイドブックを作成し、ALS患者さんを中心に家族や病院、介護事業所、患者会などあらゆるコミュニティをつなぐ役割を担っています。
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2.「うちあけ創作工房」
チーム「マイナモン倶楽部」は、小説で患者と企業をつなぐプロジェクトを提案しました。患者さん本来の経験を小説という形で表現し、プラットフォーム上で公開することで、同じ想いを思いながら患者同士がつながり、心のケアを行います。
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3.「医の卵アゴラ」
チーム「Golden Eggs」は、医学部生の「なんとなく」の殻を破るエネルギーを生み出すコミュニティを提案しました。医師としてのキャリアに不安を感じやすい医学部5・6年生に対して、キャリアデザイン支援や地域医療現場での活躍の場を提供します。多様な背景を持つ患者や医療従事者とのコミュニケーションを通じ、医師というキャリアを幸福に歩むサポートを行います。現役医学生のチームメンバーが実際に思いつきモヤモヤをヒントに今回の企画を考えました。
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4.「パウレント(ポウレント)」
「アニマルチームズ」が企画したプロジェクトは、飼い主が病気で入院や治療が必要な際に、ペットの対応を意思表示するカード・システムです。一緒に過ごすことは医療・介護費の抑制や認知症のリスクの低下などQOL向上に貢献するというデータがあるので、「ペットと離れたくないために入院を拒否する人」や「飼い主がペットの今後について明確に意思表示する仕組みがない」といった課題に注目しています。保険会社がカードを提供し、ペットと人の生活も含めてしっかりとした現実的な社会を目指しています。
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5.「モーニングヒーローファインダー」
チーム「Morning Saver〜夜明けを導くもの〜」は、朝の憂鬱をワクワクに変えるプロジェクトを提案しました。 具体的には、朝5時〜8時限定のポータルサイトを運営します。 サイトには、朝早くから活動する人たち(朝のヒーロー)の写真や感謝のメッセージを投稿することができ、ヒーローを見つけてワクワクが生まれます。
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6.「月の満ち欠け私のリズム〜女性のためのリトリート〜」
チーム「リズムプランナー」は、自分自身のライフプランに向き合う女性リトリートを提案しました。 キャリア形成と結婚・出産のタイミングを合わせるサポート20〜40代の女性を対象に、1泊2日の旅を通して自分自身の気持ちと身体に向き合い、それを日常に実践する過程までをする企画です。将来的には10代への教育や、女性だけで男性の理解が得られるようなプログラムへの展開も提案しています。
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7. 「私の入院生活」
チーム「F4」は、「患者である前に、私でいられる時間を」をテーマに、入院患者のQOL向上を支援するプロダクトを提案しました。決められたスケジュールや自由に動けない入院生活によって患者のモチベーションが低下している現状の課題を解決するアイデアです。1日のスケジュールや中のイベントの選択、今日のひとことなどを記載できるシートで、患者が主体的に入院の時間を過ごすことを目指します。
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第5期卒業生による活動報告
ポスター発表が終了後、昨年のストリートメディカルラボ第5期の修了生であり肝臓内科医の井上香さんが、昨年の修了制作のテーマ、スティグマに悩む患者さんの心を守るプロダクト「こころまもり」の活動報告を行いました。
このテーマの背景には、ウイルス性肝炎の患者さんに対して、医師による十分な説明が行われず、患者が自らの病気を正しく理解できていないという課題がありました
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最優秀賞発表・修了に寄せて
今年は、メンターと来場者による投票で「最優秀賞」が決定しました。最優秀賞は「Astro Penguin Project(宇宙ペンギンプロジェクト)」が受賞しました。 ALS患者さんのACPという難しい課題に果敢に挑戦した姿勢と、患者さんに新しい視点を考えるコンセプトが評価されたのではないかと思います。
受講は、医療とデザインが出会う場であるストリートメディカルラボでの学びをゆっくりと決意して修了制作に決意しました。
メンターの山本先生、武部先生は発表を終えて「今回の修了発表で終わりではなく、考えた企画をどうやって社会に実現するかという視点で、引き続きプロジェクトを進めていってほしい」と話していました。
第6期で生まれた7つの企画が今後どのように展開していくのか、期待したいと思います。
受講生の皆さん、半年間本当にお疲れさまでした。

