2024年9月27日(金)
第5期ストリートメディカルラボ 第11回 講義
テーマ:余白とデザイン
講師:山崎晴太郎先生
株式会社セイタロウデザイン代表。立教大学卒。京都芸術大学大学院芸術修士。「社会はデザインで変えることができる」という信念のもと活動。ブランディングを中心に、グラフィック、WEB・空間・プロダクトなどのアートディレクションを後期、グッドデザイン賞金賞、IF賞、アジアデザイン賞など国内外のデザインで最も多くの賞を受賞。各デザインコンペ審査委員や有識者委員を歴任。 2018年より国外を中心にアーティスト活動を開始。 、グループ展多数。株式会社JMC取締役兼CDO。TBS「情報セブンデイズ ニュースキャスター」、日本テレビ「バンキシャ!」主なプロジェクトに、東京2020オリンピック・パラリンピック表彰式、旧奈良霞利利活用基本構想、JR西日本、スターバックスコーヒージャパン、広瀬香美、代官山ASOなど。)
以下本文
第11回目の授業には、株式会社セイタロウデザイン代表の山崎晴太郎先生にお越しいただきました。6つのグループ会社でさまざまな領域のデザインを行う山崎先生から、「余白」と「デザイン」をテーマに人の心を動かすデザインについてお話しいただきました。
余白とデザイン
まず、余白とは何か?ということからお話しいただきました。人間は余白に対して本能的に恐怖を感じ、埋めたくなる衝動に駆られます。しかし、デザインするということの本質の一つは、「余白」をうまく使うことだと山崎先生はおっしゃっていました。山崎先生の話す「余白」には、意匠の意味はもちろんのこと、思考においての意味も含まれます。特にストリートメディカルに通う生徒には、思考の意味での「余白」がより意味を持つのではないかと思います。山崎先生は、ある概念と概念の隙間にある「余白」には、新しい概念が潜んでおり、この余白を知り、思考を横断することによって新たな価値を生むことができるとおっしゃっていました。
ストリートメディカルの概念も「医療」と「デザイン」の余白から生まれたものだと感じました。このどちらについても知った上で、横切ることによって余白から新たな価値を見つけ出すことを今後のプロジェクトを通して学んでいきたいと思います。
デザインの力とは何か
続いて、デザインの力についてお話しいただきました。山崎先生はデザインには、非連続な未来をビジョナリーに描くこと、物事の本質を捉えシンプルにまとめること、顕在化していない概念をとらえ可視化すること、一貫した気配で彩り美しく佇ませること、人の気持ちを動かすことの5つの力があるとおっしゃっていました。デザイナーという言葉には幅広い意味が含まれますが、特に非連続な未来をビジョナリーに描くことは、デザインのもつ特に大きな力だと納得しました。連続的でないところに思考を飛ばす力は一般的に論理的でなく、「何言ってんの?」と言われてしまう可能性があります。しかし、それをビジョナリーに描き説得力を持たせ、「心を動かす」答えを出すのがデザイナーの力であり、魅力だと感じました。
山崎先生のデザインの根幹にある「余白」と「デザイン」についてご説明いただいた上で、実際に余白から新たな概念を生み出した事例についてご紹介いただきました。どのデザインもワクワクするようなデザインばかりで、山崎先生の絶対軸、独自性を学ぶことができました。
ワークショップ
講義の最後に、ワークショップを行いました。ワークショップのテーマは、新しい「グラス」の概念を生み出し、名前をつけるというものです。「グラス」という概念を余白に溶かし、概念の頂点を見つける、新しい概念を生み出す、新しい概念の「グラス」を社会に顕在化させるための名前を考えるの3ステップで課題に取り組みました。このワークショップを通し、山崎先生が「グラス」と聞いて思い浮かべるものが人それぞれ違い、その違いが独自性を生むヒントになるというお話が印象的でした。自分の視点、独自性のある山崎先生ならではの、生徒にとって気づきの多い講義でした。
テキスト by 佐久間美季