2024年11月22日(金)
第5期ストリートメディカルラボ 第17回
テーマ:ストリートメディカルな人材が日常を変える。
講師:武部貴則先生
1986年生まれ。医師、博士(医学)。 大阪大学 大学院医学系研究科 教授 東京医科歯科大学 統合研究機構 教授 横浜市立大学 特別教授 シンシナティ小児病院 オルガノイドセンター 副センター長 シンシナティ小児病院 消化器部門・発生生物学部門 准教授 2013年に世界で初めてiPS細胞から血管構造を持つヒト肝臓原基(肝芽)を創り出すことに成功、2019年にはヒトiPS細胞から肝臓・胆管・膵臓を連続的に発生させることに成功。一般社団法人 Stellar Science Foundationの代表理事。オープンメディカルラボ代表。専門分野は再生医学、幹細胞生物学、移植外科学、コミュニケーションデザイン学。著書に「治療では遅すぎる。ひとびとの生活をデザインする「新しい医療」の再定義」( 日本経済新聞出版)
以下本文
第17回講義は、当学校の学長である武部貴則先生による講義でした。前半は学生から事前に集めた質問に武部先生が答えるインタラクティブなセッション、後半には卒業制作の進捗発表とそれに対するフィードバックを行いました。フィードバックセッションでは、武部先生のほか、次回講義の講師であるSean McKelvey先生、沼田理事長、西井先生が参加されました。
Q&Aセッション
学生からは幅広い質問が寄せられました。「大学の授業がつまらないです。武部先生ならどのように乗り越えますか?」というような質問から「医療関係者ではない人が、医療現場での課題に出会うことができるようにするためには、どのように活動するのが良いか?」「プロジェクトをビジネス化する際にマネタイズで工夫していることは?」などさまざまな質問がありました。
どのくらい仲間が増やせるか?
武部先生の回答の中で特に印象的だったのが、「どのくらい仲間が増やせるか」ということがプロジェクトを進める上で最も大切だとお話しされていたことです。物事を進める上で「ヒト」が最も大切で、同質性のない人が3人集まるとプロジェクトをうまく進めることができるとおっしゃっていました。また、社会に新たな価値を創出するような、「自分がこうあるべき」というものを生み出すのであれば、「ヒト→モノ→カネ」の順番で考え、マネタイズは後から考えることが重要だそうです。人(仲間・共感者)のことを何よりも大切にしている武部先生だからこそ、「病を診ずして、人を見よ」がコンセプトのストリートメディカルを生むことができたのだと感じました。
そして、より良いアイデアを実際に実現していくためには、他者との対話と通じて壁打ちをし、研磨することでより良いものにしていく必要があるそうです。「お金がないからできない」など、できない理由に固執せず、そこから視点を変え「できる方法を探す」という前向きな姿勢は、武部先生ご自身の活動の根幹にある考え方だと感じました。
「ブレる」ことと実験的な思考
また、武部先生は意図的に「ブレている」ともおっしゃっていました。研究や活動を進める中で、意図的にブレながら多くのアイデアを生み出すそうです。西井先生も、「武部先生は様々なアイデア中から可能性があるものを掴む直感のようなものが鋭い」とおっしゃっていました。
常に実験的な思考で、まず「やってみる、試す」。そして結果から「うまくいくかどうかを知る」。うまくいかなければを「うまくいく方法を考える」のだそうです。そもそも「うまくいかなそう」なことは、前提が違う可能性を考え、うまくいきそうな方法を考えるそうです。どんな状況であってもうまくいく可能性を見出す姿勢は、とても研究者的かつ創造的な思考だと感じました。同時に、なぜうまくいかなそうといって諦めることがあるのだろうと感じるほどに武部先生が純粋にご自身の関心を探究している姿勢にとても感銘を受けました。
卒業制作の進捗発表
授業の後半では、各チームのプロジェクトの進捗を発表しました。それぞれのチームが異なるテーマ、対象、アプローチでプロジェクトアイデアを形にしています。形が見えてきているチームもあれば、まだまだコンセプトを模索している段階のチームもあり、進捗はチームによってさまざまでした。それぞれの発表には講師陣からフィードバックが寄せられました。ストリートメディカル的に「ハピネスドリブン」な動機づけになっているか、できるだけ具体的な事例に対してアプローチするべき、などさまざまフィードバックがありました。また、アメリカと日本を往復している武部先生、アメリカご出身のSean先生ならではの視点からのフィードバックもありました。
講師陣からのフィードバックだけでなく、他チームの発表を聞き互いに刺激を受けることで、今後より良いプロジェクトとなっていくことを期待したいです。
テキスト by 佐久間美季