2024年10月18日(金)
第5期ストリートメディカルラボ 第13回 講義
テーマ:逆転の発想 フラッグシップをデザインする
講師:今井裕平先生
kenma 代表 ビジネスデザイナー
神戸大学大学院を修了後、安井建築設計事務所、日本IBM、電通コンサルティングなどを経て、2016年に株式会社kenma創業。 企業の見過ごされた強みを発掘して、その会社の看板商品・サービスを創り出す 「フラッグシップデザイン」を提唱 。代表作のメモがわりに使えるリストバンドwemoは100万本を超える大ヒットを記録。その他、コクヨ初の賃貸住宅事業「THE CAMPUS FLATS Togoshi」、吸水スポンジタオル「STTA」、伊勢茶ボトルレンタルサービス「朝ボトル」など、数字で成果を示すことにこだわり、これまでにないユニークな商品・サービスを仕掛けている。 グッドデザイン賞をはじめ、IAUD国際デザイン賞、フェーズフリーアワードなど社会課題解決を対象としたデザイン賞を多数受賞。東京都「デザイン経営スクール」総合監修・講師。 2024年「ヒット商品を次々と生み出すデザイン会社」として、テレビ東京『カンブリア宮殿』に出演。
以下本文
第13回講義には、株式会社kenma代表の今井先生にお越しいただきました。今井先生のこれまでのご経歴や、ビジネスデザインの意義やフラッグシップ、今井先生が考えるビジネスデザインを支えるゼロイチの公式などについてお話しいただきました。新常識を作るさまざまなアイデアで業界を先駆ける今井先生ならではの視点やプロセスをご紹介いただきました。
ビジネスデザインとフラッグシップ
まず、今井先生が現在取り組んでいるビジネスデザインという領域についてご解説いただきました。ゼロを1にする創造活動である「デザイン」と、1を10に、10を100にする立上、拡大活動である「ビジネス」を一貫して行うのが「ビジネスデザイン」と定義されました。
今井先生がビジネスデザインを行う手法の1つが、「フラッグシップ(看板商品)をつくること」です。一般的に会社のシンボルとなるものは、企業名やロゴ、キャッチコピーなど抽象的なものが多いですが、今井先生のいう「フラッグシップ」とは、企業の理念などの抽象的なものを具体的なカタチに落とし込んだもののことです。最近は企業名やロゴを変えるだけでは不十分で、その企業の理念や独自性を落とし込んだものがあって初めて一般に理解してもらえる、本当の意味でイメージを変えることができるのだそうです。優れたフラッグシップの例として、surfaceやtesla、蔦屋書店のリブランディングの事例がありました。
また、今井先生が実際に手がけた「Wemo」、「STTA」、「朝ボトル」、コクヨの住宅事業、「Fellne」などのケーススタディから、象徴的な商品が実際に売り上げを向上させ、目に見えるカタチ(数字)で成果を上げた事例をご紹介いただきました。
ゼロイチの公式
続いて、ビジネスデザインを行う方法「ゼロイチの公式」についてお話しいただきました。この公式は、「アイデア」「要件(判断基準)」「手順」で成り立ちます。このうち手順は、①まず独自性のあるアイデアを考える、②どうやったら市場性が上がるか?を考える、という順番で行うそうです。
一般的なマーケティングの手法ではマーケットリサーチやユーザーヒアリングから入りがちですが、今井先生が「フラッグシップ」となる面白いもの・新しいものを作る際には、まず独自性のあるアイデアを考えるそうです。しかし、ただ独自性があればよいというわけではなく、いかに「独自性」と「市場性」が両立するアイデアを生み出せるか?と考えるそうです。
成果にこだわる今井先生ならではの独自性のあるアイデアを生み出す方法についてより深く学ぶことができました。
30分で劇的に向上するクリエイティビティ講座
今井先生は、独自性を高めるにはアイデアだけではなく、新常識を生む着眼点が重要だとおっしゃっており、講義の最後にその着眼点を鍛えるワークショップを行いました。
ワークショップは、レベル①:理解(新常識の公式を理解できる)、レベル②:記述(新常識を公式で記述する)、レベル③:発想(常識から新常識を発想する)という順番で行いました。
レベル③では、「新しいアロマを考えてください」というお題でワークショップを行いました。まずアロマの常識を書き出し、その反対の逆常識を機械的に書き出し、それぞれの逆常識を組み合わせてアイデアを強制発想し、新常識を生み出す練習を行いました。初めてこのワークをやった生徒でも、直接肌につけずに香るアロマや雑に使っても大丈夫なアロマ、臭くて目が醒めるアロマなど独自性のある面白いアイデアを発想することができました。
今回の講義では、今井先生がこれまでに手がけた事例のような面白い着眼点・アイデアの発想方法が論理的に体系立って解説されており、とても興味深かったです。様々なことを発想する、アイデアを広げるということは論理とは程遠いもののような印象がありましたが、意識的に発想をぶっ飛ばすという点が今井先生の独自性を支える着眼点・アイデアなのだと学びました。今後ストリートメディカルのプロジェクトにおいてアイデア出し、ブレインストーミングを進める上でとても学びの大きい講義となりました。
テキスト by 佐久間美季