2024年9月6日(金)
第5期ストリートメディカルラボ 第8回 講義
テーマ:ソーシャルワークから視た街づくり
講師:町 亞聖先生
小学生の頃からアナウンサーに憧れ1995年に日本テレビにアナウンサーとして入社。その後、活躍の場を報道局に移し、報道キャスター、厚生労働省担当記者としてがん医療、医療事故、難病などの医療問題や介護問題などを取材。“生涯現役アナウンサー”でいるために2011年にフリーに転身。脳障がいのため車椅子の生活を送っていた母と過ごした10年の日々、そして母と父をがんで亡くした経験をまとめた著書「十年介護」を小学館文庫から出版。医療と介護を生涯のテーマに取材、啓発活動を続ける。直近では念願だった東京2020パラリンピックを取材。元ヤングケアラー。
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第8回目の授業には、フリーアナウンサーの町亞聖先生にお越しいただきました。講義を通して、専門の資格がなくてもできるソーシャルワークという視点の持ち方について、町先生が実際に取材に行かれた方々の活動をご紹介いただきました。
町先生ご自身が壮絶な経験をされているにもかかわらず、それを明るく語り、さらに困っている人の側に立ち、強く温かく向き合い発信されている姿に、非常に感動しました。
すでに社会は共生している
ちょうど授業と同じタイミングで開催されていたパリパラリンピックから、障がいは一様ではないというお話がありました。パラリンピックに出場している選手の中でも、途中から障がいを負った人、生まれつき障がいを持っている人、それぞれの選手の障がいのレベルによっても全く異なる経験をされています。
また、町先生が「共生社会を目指そう」という言葉に違和感があるとおっしゃっていたことがとても印象的でした。目指す目指さないにかかわらず、社会にはいろんな人が生きており、すでに社会は共生しているからです。障がいは個人の問題ではなく社会にあり、パラリンピックの選手たちは、その社会が抱える問題に光を当てている存在だとお話しされていました。
ヤングケアラーの当事者に
ご自身のヤングケアラーとしての経験をもとに現代の社会が抱える課題についてもお話しいただきました。ヤングケアラーと一言で言っても祖父母の介護をしているケースや精神疾患を抱えた両親のケアをしているケース、外国籍の両親のケアをしているケースなど、多様な問題が存在するそうです。
また、生きづらさの要因は本人ではなく環境にあり、自己責任論に偏りがちな日本の風潮も課題の一つであると指摘されました。思い込みや決めつけで判断することなく、必要な支援が適切なタイミングで届く社会を目指すためには、「もし自分だったら」と考えることが大切だとおっしゃっていました。
当事者の声に耳を傾ける
最後に、当事者が実際に声を上げ権利を勝ち取った事例や、当事者の声に耳を傾け、課題を解決した事例についてもご紹介いただきました。
「誰かの困りごとは社会のニーズである。」という町先生の言葉に、ハッと気づかされました。困っている人が誰であってもそれが社会のニーズであることは当たり前なのに、無意識に見えていない人がいたことにショックを受けました。ストリートメディカルを通じて、当事者の声に耳を傾け、社会への解像度を上げる必要性を再認識しました。
個人課題発表会
町先生の講義の後、事前に与えられていた個人課題の発表を行いました。課題は「あなたが感じている課題に対して、ストリートメディカルの手法を用いて解決する企画」を考えるというもので、町先生からフィードバックもいただきました。各自の課題に対してさまざまなアプローチが取られており、多様なアイデアが集まったのが非常に面白かったです。今後のグループプロジェクトの活動も楽しみになりました。
テキスト by 佐久間美季