第5期 7回目授業 飯石 藍さん

第5期 7回目授業 飯石 藍さん

2024年8月30日(金)

第5期ストリートメディカルラボ 第7回 講義

テーマ:私たちが作り、育むパブリック

講師:飯石 藍先生

公共R不動産メディア事業部マネージャー/株式会社nest取締役

公共空間にまつわる実践型メディア「公共R不動産」の発信する記事やpodcast等の企画・編集・監修をメインに、アワードや逆プロポ、イベント等の企画も実施。また、豊島区の社会実装プログラム「IKEBUKURO LIVING LOOP」にて、社会実験をハード整備や都市政策につなげ、公共性・寛容性あふれるパブリックスペースを生み出すべく地元企業と協業して推進中。メディアと実践を巡りながら、公共・パブリックのあり方を探求中。

以下本文


第7回目の授業では、公共R不動産メディア事業部マネージャー、株式会社nest取締役の飯石藍先生にお越しいただきました。当日は大型の台風が近づいていたためオンラインのみでの実施となりましたが、飯石先生のパワフルなご経歴から公共空間をデザインすることを学びました。

パブリックをアップデートする

講義の前半では、飯石先生がこれまでに手がけた事例のケーススタディをもとに、公共空間を作ることについてご講義いただきました。近代・これまでの公共空間デザインのプロセスは、建築家や行政が計画し、工務店やゼネコンがつくり、事業者・テナント・市民が使うという流れで行われていました。しかし現代・これからの公共空間デザインは使う人が主体となり、つくる人、計画をする人をともにリノベーションが行われる流れが増えてくるだろうとおっしゃっていました。

飯石先生が公共空間をデザインする際は、いきなり施設をドンと用意するのではなく、まず人・歴史・資源を探し、ヒアリングをし、トライアルの期間を設け、人が実際にどのようにその場所を使用するのかということを実験しながらプロジェクトを進めていくそうです。

公共空間デザインのプロセスの変化は、「病を診ずして、人をみよ」というストリートメディカルの理念を想起させるようなお話だと感じました。

エリアの未来を描いてみる

講義の後半では、飯石先生が手がけている豊島区のプロジェクト「IKEBUKURO LIVING LOOP」を題材にエリアの課題の見つけ方、人の巻き込み方などプロジェクトの進め方について詳細にお話しいただきました。

飯石先生がプロジェクトの最初にすることは、理想の風景、理想の暮らしを妄想し、描いてみることだそうです。こうなったらいいなという理想をイメージやコンセプトに落とし込むことで共感が得やすくなり、実際に同じ風景をみることができる人が増えるというお話がありました。前回の菅野先生もコンセプトの重要性をお話しされていました。比較的大規模で大人数を巻き込む必要がある空間デザインだからこそ同じイメージを共有するという点が重要になるのではないかと感じました。

また、そのほかにもまず、やってみること、観察する・検証すること、続けながらチューニングすること、人の関わりしろをつくることなど公共空間をデザインする上で重要な極意をたくさんお話しいただきました。

ワークショップ「もったいない」場所を面白い場所に

今回も授業の最後に、ワークショップを行いました。今日のお題は①あなたの身の回りで「もったいないなー」と感じている場所を1箇所選んでください。②そこが、どうやったら面白くなるか具体的なアイデアを出してください。というものです。

生徒からは、「近所の神社」をテーマに、駄菓子屋や寺子屋のような場所を作る神社復活プロジェクトや、「素通りしてしまう絶景」をテーマに散歩に適した絶景マップを作成し、散歩を促す健康アプリを作成する、「銀行」を第2の学校やワークショップを開催できる場所、なんでも相談できる場所にするなどさまざまなアイデアが出ました。

「もったいない場所」というテーマに対し、場所や建物だけでなく空間や絶景、待ち時間などさまざまな視点からのもったいないという意見があったことが印象的でした。


今回の講義の中で、飯石先生が「場所」ではなく、人が集う「場」にするとおっしゃっていたことが印象的でした。課題を解決するためだけではなく、楽しさをもとめて人が集まってくる、持続可能性のある場の作り方から学べることはとても多いと感じました。


テキスト by 佐久間美季