第6回 空間プロデューサー 菅野慶太氏 

第6回 空間プロデューサー 菅野慶太氏 

2024年8月23日(金)

第5期ストリートメディカルラボ 第6回 講義

テーマ:デザインをするということ

講師:菅野慶太先生

WHITE PAPERS Ltd, 代表取締役。広告代理店、空間プロデュース会社を経て、2007年より TRANSIT GENERAL OFFICEに参画。プロデュース事業部を立ち上げ、コンプレックスビルディングや商業施設などのプロジェクトに従事。2013年WHITE PAPERS設立。企画とブランディングを主軸に、クリエイティブディレクション、インテリアデザイン、グラフィックデザインなど幅広く活動。ファッション性の高い飲食事業の開発から大型施設の企画開発まで、多彩なプロジェクトを手掛ける。企画やビジネスの組み立てからの参画も得意とし、コンサ ルティングなども行う。

以下本文


 

 

第6回目の授業では、WHITE PAPERS Ltd, 代表取締役の菅野慶太先生にお越しいただきました。授業の前半では実際の実例をもとに体験価値デザインやコンセプトの重要性、クリエイティブ思考を身につけるための日々のふるまいについてお話しいただきました。後半では、グループに分かれワークショップを行いました。菅野先生のクライアントに寄り添う姿勢や客観的に物事をみる姿勢から、時代を先駆けるさまざまな事例が生み出される源を学ぶことができました。

ケーススタディ

講義の前半では、空間プロデュースという仕事について菅野先生が過去に手がけたプロジェクトのケーススタディをもとに「デザインをするということ」についてお話しいただきました。

さまざまなケーススタディをふまえ、菅野先生は、空間プロデュースとは体験価値のデザインであり、ビジュアルだけでなく人間のふるまいや挙動、コミュニケーションをデザインすることであるとおっしゃっていました。また、デザインは世界共通言語であるというお話がありました。デザインという言語を習得するには、物事をシンプルに考える「Think Simple」、最小限の要素で最大限の効果を上げる「Think Minimal」の視点が必要だそうです。

これらは、これはストリートメディカルにおいても重要な視点だと感じました。ストリートメディカルでは病院をはじめとする公共空間やマスに対する課題を考えることが多いですが、そこでの人のふるまいやコミュニケーションのデザインという視点を心に留めていきたいと思います。

クリエイティブ思考が身につく日々のふるまい

講義の後半では、クリエイティブ思考はどうしたら身につくのか?ということをお話しいただきました。「思考は日々のふるまいから形成される」という言葉にはとても共感しました。

「生活の中で好奇心と純真さを忘れないこと」や、「自分を客観的に観察する視点をもつこと」、「生活の一部にあるありふれた素材と素材を組み合わせること」を意識しながら日々クリエイティブ思考を身につける鍛錬をしていきたいです。

また、佐藤先生の授業や前回のワークショップで学んだことに通じる部分があると感じました。自分を表現するものだけがクリエイティブではなく、積極的に社会や他者と関わってこそすばらしいアイデアやクリエイティブを作ることができるのだと感じました。

ワークショップ「病院 x 〇〇」

講義の後半では、グループワークショップを行いました。テーマは「病院 x 〇〇」。病院と世の中にあるさまざまなマテリアルを組み合わせ、新たな企画アイデアを出すワークショップです。グループごとにディスカッションを行い、組み合わせのアイデアだけでなくその合理性や社会で通用すると考える理由について発表しました。

病院 x テーマパーク、病院 x ゲームセンター、病院 x コインランドリー、病院 x コワーキングスペース、病院 x レンタル枕屋、病院 x ホテル、病院 x リゾート地(メディカルリゾート)などさまざまな案が出ました。

菅野先生からの総評として、いいイメージのない病院をマイルドにしよう、楽しくしようとする現場側からのアプローチだけでなく、社会保障費が逼迫している現状など社会課題視点からのアプローチが提示され、菅野先生の視点の多様さに驚かされました。

 

今回の授業を通し、体験価値をデザインするという新たな視点を持つことができました。デザインと聞くとついビジュアルデザインやプロダクトデザインを思い浮かべてしまいますが、ストリートメディカルの舞台である病院や福祉施設での人々のふるまいや挙動、コミュニケーションもデザインすることができるのだと学びました。今後のワークショップや課題も、幅広い視点をもって進めていきたいと思います。

テキスト by 佐久間美季