第6期 初回講義 ストリートメディカルラボ理事長 沼田努

第6期 初回講義 ストリートメディカルラボ理事長 沼田努

2025年4月26日、第6期1回目の授業が開催されました。今回のテーマは、「デザインとストリートメディカル」で、当ラボ理事長の沼田先生が講義とワークショップを行いました。

講義「デザインとその歴史」

授業の前半では、デザインの定義や起源、歴史を学びました。デザインとアートの違いや、19世紀後半のアーツ・アンド・クラフツ運動から始まる現代デザインの流れについて幅広く理解を深めました。また、デザインがマーケティングやビジネス、インターネットやテクノロジーと結びついていく歴史的変遷についても学びました。

さまざまな分野がデザインと融合していく中で、「医療とデザイン」の領域は、まだまだ発展途上にあります。沼田先生は、医療とデザインを初めて結びつけた存在として、近代看護の母・ナイチンゲールを挙げていました。ナイチンゲールは、医療現場の課題を発見し、改善するためのプロダクトやシステムを構築したという点で、まさにストリートメディカルの実践者であるそうです。
具体的には、看護学校の設立、看護を科学的知識に基づく専門職として確立、病院の衛生環境の改善、ナースコールの導入、統計を視覚化するためのインフォグラフィックの活用など彼女が行ったストリートメディカル的改革が紹介されました。

授業後の生徒のレポートでは、「デザイン」が単なる見た目の「意匠」や「設計」にとどまらず、「手段や思考の創意工夫」という意味を含むことを新たに学んだという感想がありました。ストリートメディカルラボでは、まさに「創意工夫としてのデザイン」を学びます。第6期の授業を通し、「医療とデザイン」を実践する人が増えることを期待したいです。

行動変容ワークショップ

授業の後半では、2つのワークショップが行われました。1つ目は、自分の行動変容を考える個人ワークショップ、2つ目は、グループで1人のメンバーの行動変容を考えるグループワークです。

1つ目のワークショップは自分の1日の生活の中で「ちょっと怠惰かも...」と思う行動を書き出し、それに対する改善策を考えてみるものです。運動不足、朝起きてすぐスマホを触ってしまう、食器を洗わずに後回しにしてしまうなど、生活の中のさまざまな課題が挙がりました。それぞれの課題に対して自分なりの解決策を立て、全体で共有・発表を行いました。

2つ目のワークショップでは、グループの中で「昨日の歩数が最も少なかった人」に対し、毎日プラス3000歩(2.4キロ)歩いてもらうための施策を考えました。リモートワークで1日ずっと家で過ごす人、朝9時から夜10時まで職場にいて歩く時間がない人、家から職場まで車で通勤している人などチームによって課題はそれぞれでした。
施策のアイデアとしては、アプリで同じ課題を抱える人と歩数の目標を共有しチームでミッションをする、歩きたくなるような靴やスポーツウェアを買う、パートナーや友人との外出で歩く、ポッドキャストやポケモンGO、神社仏閣巡りなどの趣味を利用して楽しみながら歩く習慣を身につける、などさまざまな案が挙がりました。

初回授業ということもあり最初は緊張していた様子でしたが、和気藹々とワークショップに取り組む様子が印象的でした。多様なアイデアがでましたが、「歩きたくなるきっかけを作る」という視点で考えられていたのがストリートメディカル的な発想だと感じました。

医療者からデザイナー、20代〜60代の多様な生徒が参加していますが、それぞれの視点を持ち寄って今後のワークショップに取り組んでくれることと思います。