2024年7月26日(金)
第5期ストリートメディカルラボ 第3回 講義
テーマ:クリエイティブは課題解決から、可能性創造へ
講師:佐藤夏生先生
プロフィール:博報堂のエグゼクティブクリエイティブディレクター、HAKUHODO THE DAY代表を経て、2017年にブランドの課題解決ではなく、可能性創造をリードするブランドエンジニアリングスタジオ EVERY DAY IS THE DAYを青山尋紀と立ち上げる。 過去には、adidas、NIKE、Mercedes-Benzのクリエイティブディレクターを歴任。近年は、広告プロモーションから、商品開発、事業開発、VI、CI、空間デザインや都市のブランディング等、クリエイティブの社会実装を実践。 GOOD DESIGN AWARDをはじめ、ACCマーケティングエフェクティブネスグランプリ等受賞。2018年から、渋谷未来デザインのフューチャーデザイナー、横浜市立大学先端医科学研究センターのエグゼクティブアドバイザーを務めている。趣味は、珈琲と最近始めたスキー。
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今回の講義には、これまでにも何度もご登壇いただいている佐藤夏生先生にお越しいただきました。佐藤先生は、「広告医学」から「ストリートメディカル」という概念を新しく作った先生でもあります。テーマは「課題解決から可能性創造へ」です。アイデアとは何なのか?アイデアを見つける方法についてお話しいただきました。
講義
講義の前半では、佐藤先生のご経歴と、発想の転換でアイデアを生んだ事例についてご紹介いただきました。まず、マーケティングとは、どのようにして生活者の認知(Perception)を変えていくかを考える領域であるというお話がありました。風邪の引き始めに風邪薬を飲む、喉が渇く前に水分を補給するといった人々の認知を変えた広告の事例がありました。また、減塩、三密、クールビズといった新しい概念に言葉を与え、人々の行動を変えていくという事例もご紹介いただきました。
そして、佐藤先生ご自身がiphoneのホームボタンに衝撃を受けた経験から、アイデアとは何か?というお話をしていただきました。アイデアを見つけるには社会の中に落ちているヒントをいかに見つけるか?ということが重要であり、発想の転換によってアイデアが生まれ、革新が起こり、社会が変わっていくそうです。アイデアは、未知と既知の交点である。いいアイデアは極めてロジカルであり、誰もが共感するとおっしゃっていたことが印象的でした。
そして、佐藤先生が発見した「患者外患者」についてご説明いただきました。患者が苦しんでいることはもちろんのこと、その周りにいる人たちも意図せず困っている人がいるのではないか?という視点から生まれた言葉です。きょうだい児におけるケアの不足の問題や認知症介護の負担などを例に挙げ、その周りの人たちのケアをするサービスや診療科があればいいのではないか。「病を診ずして、人をみよ」というストリートメディカルのスローガンの根底となった考え方です。
ある事象に対して新たに言語を当てることで問題が可視化され、人々の行動変容を促すことができる。人の認識や行動をアイデアによって変える手法は、まさにストリートメディカルの考え方の根幹にあると感じました。
また、生徒からどうやってアイデアを出す練習をするのか?という質問がありました。佐藤先生は「とりあえず量を出してみる」「たくさんアイデアからいくつか選び、ずーっと考え続ける」「人と掛け算する」という3つの方法でアイデアをブラッシュアップしていくことができるとおっしゃっていました。日常の中で自分の視点だけでなく、いろんな人の視点から社会を観察することで、アイデアを生み出す脳の拡張をすることができるそうです。良いアイデアをだせる人、発想力がある人は才能があるというイメージを持ちがちでしたが、日々の積み重ねで観察眼や思考がトレーニングされているということに驚きました。
ワークショップ「新しいドラえもんの道具を考えよう」
自分のアイデアで世界に幸せを生み出すような「新しいドラえもんの道具」を考えようという演習を行いました。誰かに何か幸せを生み出すアイデアを出すという練習です。
生徒からは、さまざまなアイデアが発表されました。これまでにした忘れ物を記録し、忘れ物の傾向を示してくれる「わすれもノート」、相手の体の感覚や考え方、感情を一時的に感じることができる「こうかんこ」などさまざまなアイデアがでました。
その他にも「明けないよルーム」「永久水筒」「顔面プリンター」「余計なことを言わないマスク」「オートテルマエ」「死んだふり帽子」などさまざまなアイデアが挙がりました。
固定概念を取り払い、自由な発想で日常の中の問題に取り組むことで、アイデアを生み出す練習をすることができました。どんな環境にいようとも、自由な発想を手に入れるかどうかは能動的であり、自分のスイッチひとつであると佐藤先生はおっしゃっていましたが、ドラえもんの道具という視点から考えることにより、より自由な発想でアイデアが生まれたのではないかと思います。
授業後に生徒発信でアイデアシェア会開催の提案がされるなど佐藤先生のお話にインスピレーションを受けた生徒がたくさんいました。今後、みなさんからどんなアイデアが生まれるのか、とても楽しみになりました。
テキスト by 佐久間美季